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貧困の光景

曽野綾子著『貧困の光景』を読んだ。
本を読むのが苦手なこの私が火曜日に購入して木曜日に読み終わるなんて自分でも驚いているが、エッセイなので一章毎が長くなくその上に文章も美しいので、大変読み易い本だった。
元々この本には興味があったが、初めて出会った時には買わなかったのに、私の大好きなブログで「何故アフリカ大陸の貧困は改善されないのか、それを一部ながら理解した」ということでこの本ともう一冊を紹介しており、たったそれだけで購入を決めた次第である。
このエッセイは、曽野綾子自身が目の当たりにした「貧困の光景」を克明に記したものだ。残念ながら私には、この事実からアフリカ大陸の貧困が改善されない原因を読み取るだけの知識や能力が欠けているため、これを読んでただ心を痛めることしか出来なかったが、それだけでも得たものは大きい。

曽野綾子はクリスチャンで、自身もキリスト教系のNGOに参加して、貧困に喘ぐ人達のために支援活動をしている。この本は、そういった活動や、彼女の作家としての取材の中で見た現実を、思い返し淡々と記録したものである。整然とした文章からは、そうした困難から人々を完全に救うということの難しさ、諦念さえ感じられる。
貧困の人々を助けるには募金をすれば良いと私達は安易に考えがちだが、物事はそう簡単ではない。勿論、何を成すにもお金は必要なので募金そのものは大変良い行いではあるのだが、そのお金が本当に必要な人達の元まで届いているかという問題がある。
私は基本的に近所の量販店の募金箱には募金しないことにしている。まさかその量販店内で着服しているとは思わないが、その量販店が集めた募金を渡す先がどういうところか分からないし、日本国内では着服されなくても、現地に行って、私達が使ってほしいと思ったその人達に届くまでになくなっている可能性は非常に高いからだ。
そういった国々には私達の税金から、日本政府は多額のODAを送っているが、相手国政府が信用出来ないケースも多い。そういった多額のお金を私的流用するというのはかなり普通のことであるらしいのだ。政府高官が腐敗し、政治が機能がしていないから、そういった国々の貧困は止められない。根本的な構造改革が必要だということになる。
しかしそんなことを簡単に出来るはずもない。何よりもまずその国にいる人達に、そうするだけの力が無いのだから。貧困とは正に社会の病理なのである。

貧困の光景そのものについては本書を読んで欲しい。
そうした事実があるという知識はあったものの、これが現実であると、それもごく普通の光景なのだとして事例をいくつも読んでいて、私は大変なショックを受けた。そして自らを大きく恥じた。
私は偶然にも日本に生まれたというだけで、こんなにも守られ、教育を受け、人生に選択肢があり、あらゆる幸運と幸福に恵まれている。周囲にもそうした人しかおらず(日本人である以上皆同じなので、半ば仕方ないことかもしれないが…)、このことをすっかり忘れて感謝の気持ちも薄れていた。そして日々の瑣末なことに捉われ、いらいらしたりストレスが溜まったなどと言う。ストレスなどというものは、実に現代が生み出した贅沢な病である。
もっと謙虚にならなければと思った。
他にも恥かしいことに私には、そうした現場に駆け付け、病気の人達をさすってあげるだけの実行力も持たないので、せめてユニセフにでも寄付して、困っている子供達のためになることの一助に少しでもなれればと祈るばかりである。

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